06/02/2022
今週の一冊 #301
『思いがけず利他』
中島岳志/ミシマ社 2021
利他行為が文字通り他者を利する行為として、果たして自分を利することを全く度外視して、純粋に他者のためだけに行動することはできるのだろうか。情けは人の為ならず、そんな諺が人口に膾炙しているように、また、コロナ禍において、合理的利他主義という考え方が注目されているように、結局のところ、巡り巡って最終的には自分に利があることを計算尽くで、利己的な(見せかけの)利他行為が横行してしまうのではないか。さらに、利他行為を受け取る側が見えざる負債感を抱いたり、当事者間での無言の支配関係を生み出す事態が発生してしまうのではないか。利他には、その美しく理想的な姿とは裏腹に、偽善、負債、支配といったような負のイメージが常に付き纏い、実現には困難を伴う。著者の中島氏は、この困難な利他の扉を開くためのキーワードとして、利他の本質と考えられる「思いがけなさ」に思いを巡らす。利己を超えた偶然性や他力で突然にもたらされるもの、それに不意に遭遇した際に利他は起動するのではないか。その偶然を呼び込む器となること、そして、起動した利他を循環させていくこと、ひととき利己から解き放たれた世界を夢想する。